多動傾向のお子さんをもつ親御さんは、いつも大変な思いをされています。
少し叱ったくらいでは、またく大人しくなる様子は見られません。
とにかく衝動的に動き回るお子さんに振り回され、身も心もくたくたになってしまいます。
どうして多動傾向のお子さんは、あんなに動き回ってしまうのでしょう?
そしていくら叱っても注意しても多動をやめないのでしょう?
それには脳の皮質下ネットワークの未発達による神経活動の問題があるからなおです。
そして、この問題を理解することで、お子さんの多動傾向を改善することができるようになるのです。
多動傾向の3大原因とは?
じつはお子さんが多動になる原因には、大きく3つの要因があります。
【多動傾向の3大原因】
⑴ 抑制性神経系の未発達
⑵ 注意コントロールネットワークの未発達
⑶ 感情コントロールネットワークの未発達
この3大原因の組み合わせによって、お子さんの多動傾向の特徴やレベルが決定されるのです。
ではこの多動の3大原因のそれぞれについて解説していきますね。
抑制性神経系の未発達による多動傾向

子供の特徴として『衝動性が高い』ことが挙げられますね。
そして多動傾向の中に、衝動性がとても高くて多動になっている場合があります。
この『衝動性』とは、どんなものなのでしょうか?
私たちの脳の働きには「アクセル」と「ブレーキ」の働きをする仕組みがあります。
この脳の「アクセル」の働きをするのが『興奮性神経系』で、「ブレーキ」の働きをするのが『抑制性神経系』になります。
つまり何かの動作をしようと思いついて、それを実行するための神経活動をしているのが『興奮性神経系』の働きなのです。
しかし『興奮性神経系』の活動だけでは、私たちの活動はスムースにできません。
なぜならば、私たちの行動の、いわゆる衝動性を抑えて、ブレーキをかけるための神経活動が必要になるからです。
それの私たちの衝動性にブレーキをかけて、いったん思いとどまらせて、慎重に行動させるための神経活動をしているのが『抑制性神経系』の働きなのです。
私たちの活動の基本は『興奮性神経系』によって活発に行動していますが、それだけだと衝動的になりすぎるために、それを抑えてブレーキをかけ、より慎重に行動させているのが『抑制性神経系』の働きなのです。
よく雀の子やウサギの子は、ちょこまかと動き回り、ちょっと大きな音がしただけで、一目散に逃げていってしまいます。
これらは興奮性神経系の活動が優位で、衝動性が高いから、このような行動パターンになるのです。
その反面で、トラやライオンなどの肉食動物は、衝動性が低く、ゆったりと落ち着いて行動しています。
これは天敵から襲われる心配が少ないため、より落ち着いて慎重かつ戦略的に行動する方が、生存に有利だからです。
人間も、子供の時には「興奮性神経系』が優位で、衝動性が高く、ちょこまかと動き回っていますが、成長して『抑制性神経系』が発達してくると、落ち着いて行動するようになるのです。
せっかちに衝動的に行動するよりも、慎重によく考えて行動する方が、いろいろと有利だからです。
発達障害児の中で、衝動的にちょこまかと動き回るタイプの子供は、この『抑制性神経系』の活動が未発達で、衝動性にブレーキが効かないのが原因なのです。
このタイプの衝動的な多動傾向に対しては、抑制性神経系の発達を促して、お子さんの「心のブレーキ」を育てることが大切なのです。
注意コントロールの未発達による多動傾向

よく多動傾向のことを『注意欠陥多動症(ADHD)』と呼ぶことがあります。
この注意欠陥型の多動症も、よく見る多動傾向のひとつですね。
私たちの『注意』とは、いわゆる意識のスポットライトです。
普段は漠然と、自分の周囲の四方八方に拡散されている意識が、何か注意を払うべき対象を認識した途端に、その対象に向かって収束して観察を始めます。
たとえば青山のおしゃれなカフェの窓際に座って、ぼんやりと窓の外を見ていたときに「あれ、あの人知っている人かも?」と思った途端に、その人物に向けて意識を集中して、観察を始めます。
これが『注意』です。
この『注意』とどうするか、どこに向けて、何を観察するのかについてコントロールしているのも『皮質下ネットワーク』の仕事なのです。
この皮質下ネットワークの中で、注意をコントロールしているのが、いわゆる『注意コントロールネットワーク』なのです。
そして感覚統合不全などの問題で、脳に適切な感覚入力がなされずに、脳が十分に鍛えられないことで、皮質下ネットワークが未発達になると、多くの場合に、この『注意コントロールネットワーク』も未発達になって、きちんと「注意」をコントロールできなくなるのです。
注意のコントロールには、① 注意の選択 ② 注意の保持 ③ 注意の切替え の3つがあります。
まず自分の意識を正しく対象に向けられないと、注意のコントロールがうまくいきませんね。
たとえば先生に職員室に呼ばれて、お説教をくらっているのに、先生の机の上に飾ってある、アフリカ土産の変な人形が気になって、先生の話がまったく聞こえていないみたいな状態です。
これは「注意の選択」がきちんとコントロールされていない状態ですね。
また正しい対象に注意を向けられたとしても、その注意を保持し続けることができずに、周囲の音や光の刺激に反応して、気が散ってしまう場合もあります。
これは「注意の保持」ができずに気が散らかってしまっています。
また『注意の切換え」ができないと、興味のある動画などを見ていて、呼ばれても全然返事ができないような、いわゆる『過集中』の状態になってしまいます。
注意コントロールの未発達による多動傾向は、特に「注意の選択」と「注意の保持」が未発達で、注意が散漫になってしまい、落ち着かない状態になっているのです。
このタイプの多動傾向に対しては、皮質下ネットワークによる『注意コントロール』の発達を促すアプローチが有効になります。
感情コントロールの未発達による多動傾向

発達障害の中には、感情コントロールが未発達になっているお子さんがいますね。
ほんの些細なことで起こり出したり、泣き出したり、常に不安を感じてピリピリしていたりします。
この『感情コントロール』の未発達の中に、急に起こる興奮を制御できなタイプの問題があるのです。
このタイプの子供は、珍しい環境や、興味をひくものがある環境に行くと、気分がたかぶって興奮してしまう場合があります。
この「ヒャッハー」となった状況では、お子さんは自分ではなかなか感情を落ち着かせることができずに、周囲の環境を無視して、ひとしきり暴れ回ることになります。
このように感情コントロールの未発達による多動傾向は、その環境などの影響されることが多く、初めての珍しい環境や、特定の相手とのアクティビティなどで発動することが多いのです。
この『感情コントロール』の未発達による多動傾向のケアには、まずは感情コントロールの未発達を改善するためのアプローチが必須なのです。
お子さんの多動傾向の原因を知ることで効果的なアプローチを!

このように、一口に多動傾向と言っても、その原因には、これまでご説明した3つの原因があります。
そして多くの多動傾向は、この3つが複合して起きている場合がほとんどなのです。
ですからお子さんの多動傾向のケアには、これらの多動傾向の原因を踏まえて、それぞれに適切なケアを行う必要があるのです。
そして適切なケアを行えば、まずお子さんの多動傾向は、改善していきます。
大切なのは、多動の原因をハッキリさせた上で、適切なケアを行うことが大切なのです。
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