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発達ケアの基礎

皮質下ネットワークの未発達が問題行動の原因です!

私たち人の脳は、高度に進化しており、大脳皮質が発達しています。

大脳皮質は、私たち人間の知性を司る、とても重要な脳の領域ですね。

そして大脳皮質は、さまざまな働きを持った領域に分かれています。

たとえば「見たものがなんであるのかを判断する領域」「聴いた音が人の言葉なのか自然の音なのかなどを判断する領域」「手足を動かすための領域」「物事を記憶する領域」「感情ややる気をコントロールするための領域」「空想やアイデアを生み出す領域」などさまざまです。

しかし脳を正しく働かせるためには、これらの大脳皮質のたくさんの領域を、相互にネットワークして、協力して働かせる仕組みが必要になります。

そのネットワークを司っているのが『皮質下ネットワークと呼ばれる仕組みなのです。

そして子供たちが発達障害になる、その問題行動の原因となるのが、この『皮質下ネットワーク』の未発達による脳の機能不全なのです。

ではこの『皮質下ネットワーク』とは、いったいどんなシステムなのでしょうか?

皮質下ネットワークを構成する神経核

皮質下ネットワークとは、脳の下の方に位置しており、いくつかの神経核によって作られたネットワークを指しています。

この『皮質下ネットワーク』を構成する神経核には、主なものとして、以下のようなものがあります。

【皮質下ネットワークを構成する神経核】
❶ 視床
❷ 大脳基底核・線条体(入力系)
❸ 大脳基底核・レンズ核(出力系)
❹ 大脳辺縁系・海馬
❺ 大脳辺縁系・扁桃体+側坐核
❻ 中脳

などが挙げられます。

まずは、これらの神経核の働きについて少し解説をしておきたいと思います。

それぞれの神経核にはどんな働きがあるのか?

⒈ 視床

視床は、皮質下ネットワークの中核として働く重要な神経核と考えられています。

視床は、中脳の上で、左右一対になっており、大脳基底核の線条体とレンズ核に挟まれた位置に存在しています。

視床の働きとして主なものは、全ての感覚情報の中継核として働いており、いわゆる五感 + 1と言われる、「視覚」「聴覚」「味覚」「嗅覚」「触覚」「筋肉運動感覚」の、総ての感覚情報が『視床』に集められ、そこから大脳皮質のそれぞれの領域に送られて、分析され、周囲の環境認知などの処理が行われます。

視床は脳が情報処理を行うための、その中核として働いており、それだからこそ、感覚統合不全によって、視床に適正な感覚情報が入力されないことで、視床の働きが未発達になり、そのために脳が発達障害になってしまう原因となっているのです。

⒉ 大脳基底核・線条体(入力系)

視床の内側に、長くぐるっと尻尾を巻いた様な形をしているのが『大脳基底核・線条体』です。

この『大脳基底核・線条体』は、入力系の働きをする神経核であり、いわゆる私たちの「認知」に関わる働きをしています。

また相手と自分との行動や能力などを比較する、「相対評価」に関与しており、またそれに関連して、裏の脳と呼ばれ、想像力に関与している『デフォルトモードネットワーク』と連携して、相手に対する共感力などにも関連している神経核です。

⒊ 大脳基底核・レンズ核

視床の外側の位置に、視床の方にレンズを向けているような形をして存在しているのが『大脳基底核・レンズ核』で、皮質下ネットワークのなかで、出力系の働きをしています。

皮質下ネットワークのメインの働きである、「認知」「意思決定」「行動出力」の3つの働きの中の、主に「行動出力」に関与しています。

このレンズ核の働きが未発達になると、お子さんは動作がぎこちなくなります。

これはレンズ核が、手足の筋肉の運動に対して、ブレーキとアクセルを調整する働きを持っているからです。

またお子さんが、なにかの動作を行おうとしたときに、それがスムースにできずに、動作がすくんでしまう、いわゆる「場面緘黙」的な問題も、起こりやすくなります。

⒋ 大脳辺縁系・海馬

大脳基底核・レンス核の下側に、薄い靴ベラのように伸びてきているのが『大脳辺縁系・海馬』です。

この『海馬』は、私たちの記憶のコントロールに関与しています。

海馬は、短期記憶を電気信号として、短時間(数秒から数分程度)記憶するだけでなく、その短期記憶の中から、重要なものを長期記憶として、側頭葉に記憶する働きを持っています。

⒌ 大脳辺縁系・扁桃体 + 側坐核

この『扁桃体』と『側坐核』は、前頭葉の報酬系と連携して、私たちの感情コントロールに関与しています。

これらの神経核の働きが未発達になっている子供は、些細なことで怒りっぽくなったり、常に不安を感じやすくなったりします。

また「やる気」のコントロールにも関係しており、好きなことにはヤル気があっても、興味が持てなかったり、少しでも面倒だと感じてしまっていると、ヤル気がまったく起きなくなるなどの問題が起こりやすくなります。

⒍ 中脳

中脳には、たくさんの『ドーパミン作動性ニューロン』が集まっています。

この中脳にあるドーパミン作動性ニューロンは、「報酬の予測」に関与しており、私たちが「認知」した周囲の環境に対して、どんな行動をとれば「報酬」が高まるかを判断するのに関係しています。

私たちは、基本的には、自分の行動の結果に得られる報酬が最大になるように行動するようになっています。

そこの社会的な背景などに忖度する、いわゆる「社会性」による選択などが加味されて、どんな行動をとるべきかの「意思決定」が行われるのです。

この私たちの「意思決定」に影響しているのが、中脳のドーパミン作動性ニューロンの働きなのです。

皮質下ネットワークは、これらのさまざまな働きをもった神経核が連携して、ネットワークを形成しているのです。

次からは、これらの皮質下ネットワークの働きについて、まずは簡単に解説していきますね。

認知-意思決定-行動出力パラレルループ

皮質下ネットワークの、一番基本となる働きに、『認知-意思決定-行動出力パラレルループ』の働きがあります。

私たちの脳の働きの基本に、「周囲の環境情報を分析して、それに対して最適な行動を決定して出力する」というものがあります。

私たちの脳は、周囲の環境に対して、正しい行動を考え出すことが、その基本的な役割なのです。

そしてこの脳の基本の働きを司っているのが、『認知-意思決定-行動出力パラレルループ』です。

このループは、パラレルループと呼ばれるだけに、大脳皮質と皮質下ネットワークの神経核群の間に、いくつものループを作っており、そのループを回すことで、① 周囲の環境を認知し ② それに対する最適な行動を決定し ③ その意思決定された行動を実際の動作に出力する という働きをしています。

このループが未発達なことで、子供たちは、さまざまな問題行動を引き起こします。

たとえば ① 認知ループが未発達なことで、子供たちは『認知の歪み』による問題行動を起こして、こだわり行動や、白黒思考による生きづらさなどに悩まされることになります。

また ② 意思決定ループが未発達になると、適切な意思決定ができず、優柔不断になってしまったり、間違った行動を選択しやすくなったり、興味の範囲が極端に狭い、行動に柔軟性がないなどの問題が起こりやすくなります。

さらに ③ 行動出力ループが未発達になると、自分ではわかっているのに、なぜか行動が起こせない。

いわゆる場面緘黙や、相手の言っていることは理解できるのに、上手に話せない(発語の未発達)などの問題が起こります。

この皮質下ネットワークによる『認知-意思決定-行動出力パラレルループ』は、いわゆる地頭の良さにも関係しており、ぼんやりしていて、しっかり行動できない子供などの、知的な問題にも、このパラレルループの未発達が関係しています。

自動思考を司る皮質下ネットワークの働き

私たちは1日に何万回もの意思決定を行っています。

たとえば「喉が渇いたから水を飲もう」などの、日常的で基本的な行動の意思決定を、いちいち大脳皮質の意思決定回路を使っていては、半日も経たないうちに、脳がクタクタに疲れていまします。

ですから私たちは、日常生活のルーティンワークなどの多くを、無意識下に行っています。

なんとなく朝起きて、生活習慣に従って、冷蔵庫からペットボトルの水をとり出して飲むなどの動作を、私たちは冷蔵庫のドアをどうやって開けるかなど、いちいち意識せずに行っています。

つまりこれらの動作を、皮質下ネットワークによって、自動化して行っているのです。

皮質下ネットワークが未発達だと、このルーティンワークの自動化がうまくできないことがあり、そういった子供は動作がぎこちなかったり、スムースにできずにおどおどしていたりします。

発達検査で、「ワーキングメモリ」が働いていないと判定される場合には、この皮質下ネットワークでのルーティンワークなどの自動化がうまくできていない場合があるのです。

注意コントロールネットワーク

私たちは、周囲の環境をよく観察するために、注意力を必要としています。

この注意力とは、いわば皮質下ネットワークにおける、注意コントロールの能力の問題なのです。

皮質下ネットワークの中に、この注意のコントロール行うネットワークが存在しており、このネットワークが未発達になることで、子供さんは注意のコントロールがうまくできなくなります。

注意が保持できず、次々に目先がコロコロと変わって多動になってしまうケースや、過集中になるとまったく返事ができなくなるケース、タブレットなどで動画を見ていても、数秒単位で次々に動画を切り替えてしまうなどの問題行動が起こってしまいます。

感情・記憶コントロール

発達障害の子供たちの中には、意味意不明に起こり出したり、急に興奮してはしゃぎ出して手がつけられなくなったり、常に不安を感じていて緊張していたりと、さまざまな感情のコントロールに関する問題を抱えている子供たちがいます。

皮質下ネットワークの、大脳辺縁系の『海馬』『扁桃体』『側坐核』などを含む、感情コントロールネットワークが未発達になることで、これらの感情のコントロールが不安定になり、子供たちは、常にピリピリしていたり、感情の波が大きくて混乱したりと言った問題が起こってきます。

運動学習コントロールネットワーク

発達障害の子供たちの中には、ボタンの留め外しができなかったり、お箸がうまく使えなかったり、歩いていてよく転倒するなど、運動能力に対する問題を抱えている子が多く見られています。

これらの『発達性協調運動症』の問題は、皮質下ネットワークの運動学習コントロールネットワークの未発達が原因です。

これらの運動の発達に関する問題をもつ子供たちは、生まれつきに運動音痴なのではなく、運動を学習し、コントロールするための、皮質下ネットワークが未発達なために、動作を上手に学習し、コントロールすることができないだけなのです。

ですから成長するにつれ、この運動ネットワークが発達してくると、運動能力も高まってくることが多いのです。

言語機能ネットワーク

発達障害で言葉の発達が遅れている子供は、じつは相手の言っていることは良く理解できていたりします。

ただし相手の言っていることが理解できていても、それに対して適切に対応できるとは限らないために、「言っていることをわかっていない」と誤解されやすい傾向も認められています。

じつは言葉の発達の遅れの問題は、自分の心の中の言葉を、正しく紡ぎ出して、それを口や声帯の運動に適切に変換するための言語ネットワークの未発達が原因で、自分の言いたいことは頭の中にあるのに、それを適切に発語できないことが原因なのです。

私たちの言語能力は、「聞き言葉」と「話し言葉」に分けられていますが、発達障害児の言葉の発達の遅れは、この「話し言葉」の遅れの問題なのです。

ですからこのタイプのお子さんは、言葉が理解できないのではなく、言いたいことがあっても、それをうまく口にすることができない、いわばとても重度の口下手みたいな感じなのです。

自己認知と他者理解の発達(社会性スキルの基礎)

私たちの社会性スキルの基本となっているのが、『自己認知』と『他者理解』です。

自分とはなんぞや、と言うことをよく理解した上で、相手の立場や、相手の気持ちをよく想像して忖度できることが、この社会性スキルの基本なのです。

軽度の自閉スペクトラム症の子どもたちの中に、共感力が低く、相手の気持ちが理解できない子供達がいます。

ちょうどホリエモンやイーロンマスクみたいなタイプと言えばわかりやすいでしょうか(笑)

これは皮質下ネットワークの大脳基底核・線条体での、相手の行動と自分の行動を相対評価する機能と、想像力を司どる裏の脳である『デフォルトモードネットワーク』の連携が未発達なことで、相手の行動に対する想像力が働かないことが原因で起こります。

相手の気持ちに立って考えられないと、その人は空気が読めない、勝手な行動をとる人になってしまいます。

子どもたちの社会性を育てるためには、ただ教えたり、叱ったり、諭したりするだけでは、社会性スキルは成長しません。

この『自己認知』と『他者理解』を司る、皮質下ネットワークとデフォルトモードネットワークの連携によるネットワークを発達させてやる必要があるのです。

皮質下ネットワークのケアが発達障害ケアの基本です!

これまでのABA(認知行動療法)や、さまざまな療育プログラムによって、発達障害に対するケアの効果が、今一歩であった、その根本的な原因は、この皮質下ネットワークの働きを、きちんとトレーニングして、その発達を促すアプローチを省略して、いきなり本番のケアをおこなってしまっていたからです。

それはキーボードの故障した高性能パソコンの、その壊れたキーボードを、一生懸命に叩いて、子どもたちの脳にプログラミングを行おうとするような無駄な行為です。

子どもたちの発達を効果的に促していくためには、まずはキーボードの修理から始めなければなりません。

それが『皮質下ネットワーク』の発達を促して、その機能を適正に成長させるためのアプローチです。

ブレインバランスセラピーでは、この皮質下ネットワークの発達ケアを、ケアの基礎として、効果的な発達ケアを提供しています。

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